しあとりかる-Theatrical-’s blog

観たこと聴いたことに愛あるツッコミを!!

永井路子「炎環」

初版は1964年。絶版になってたのでもう読めないと諦めてた。新装版が出てたのを知らなかった。

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」1979年の「草燃える」やその原作となった永井路子氏の「北条政子」や「炎環」もチラホラ話題になってたので、電子書籍になってないかなぁなんて検索かけたら、「あった〜😄」。一気に読んじゃいましたよ。

さすが直木賞受賞作品。永井氏の洞察力が深い。

 

「悪禅師」では阿野全成(頼朝の弟)、「黒雪賦」では梶原景時、「いもうと」では北条保子(北条政子の妹、全成の妻)、「覇樹」では北条義時をそれぞれ主人公としている。

独立した短編としても楽しめるけれど、一連の作品を通して読むと、誰が味方で誰が敵だかわからない、謀略と裏切りだらけの鎌倉幕府成立後の混沌とした中で、それぞれがどう考えてどう生きていこうといたのか想像力を膨らませて読むことができる。

動かせない歴史的事実と事実の間にある、隙間をどう埋めていくのか。その時代の人々がどんな思いで生きていたのか、絡み合ったものを丁寧にほどいて語る。それをどう語るのかは歴史を題材としたエンターテイメントの作り手の腕の見せ所だと思うのだけれど、「炎環」は歴史小説の面白さを十分堪能できる作品。