- アーティスト: Rhymester,佐々木士郎,山本仁,坂間大介,ジョン・クレマー
- 出版社/メーカー: キューンミュージック
- 発売日: 2004/02/04
- メディア: CD
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ご機嫌なトラックに乗せて,鋭くナイスなリリックを展開する,“へぼ詩人”という意味を持つライムスター!
今作でも冴えまくり!前年の「ウワサの伴奏」に続き、2004年一番インパクトあったアルバム。
ただ,前作と比べて硬派で,コワモテかも。誰にでもオススメできるのはこちらより,「ウワサの伴奏」かと。
2003年から2004年にかけての日本という社会,さらに国際社会について,反対に身近なことについて,大小さまざまなことをHIP HOPで語る。その切り口が面白い。
今まで聴いた“社会派”と呼ばれるハードなHIP HOPの歌詞って、独善的な印象があって。
やっている本人は「俺ってかっこいい!」と思っているんだろうけど,分析の甘さや思考の浅さが出てしまって,逆にかっこ悪い*1。
だから,HIP HOPってイマイチだよなぁ〜なんて思っていた。
でも,この「グレイゾーン」,手放しで褒めるわけではないけど,うなづけるところもあり,いいところ突いている。HIP HOPの印象がちょっと変わった。
アメリカや北朝鮮を批判しているあんただって彼らと同類なんじゃない?ってこちらに突きつけてくる鋭さ。
そんなこと言ってる彼らも自己嫌悪に陥って酒をかっくらう,なんて情けないところも。
大口叩いているけど実はそれが苦手なんだよ、なんて打ち明けるし。
硬軟混ざってて,面白い。
スタンバイ・チューン
トラック大好き。
ライムの踏み方もお遊び全開で面白い。
現金に体を張れ
シングル曲。お金をまつわる,硬派な曲。
金をめぐる攻防について「どいつもこいつも我利我利亡者」という。
そういうのを目の当たりにしてるだけに・・・
ザ・グレート・アマチュアリズム
トラックは楽しい〜♪踊れる。↓に注目
ネェ 社長サン 遊ンデカナイ? モチボッタクルヨ デモ損デハナイヨ
例ノゲートノ通行料 ヨリハマトモデショ? 言ワバ授業料
「例ノゲート」はこの時期から一斉にソニーグループが採用したレーベルゲート(CCCD)のこと。彼ら(所属はキューンソニー)はこのアルバムでレーベルゲートを採用することに抵抗したみたい。でも,会社の方針だということで押し切られ,せめてもの抵抗としてソニーの「社長サン」を皮肉ってこのリリックを織り込んだんだとか。
だから私は酒を呑む
MUMMY-Dのラップが素晴らしい。それとトラックの声との掛け合いが面白い。
彼らと同世代(’70生まれ)だけに,うなずいてしまうリリックがあったりして。
911エブリデイ
911とは2001年9月11日、アメリカの同時多発テロのこと。
その後の世界情勢はそれに対する制裁としてアメリカはアフガニスタン、イラクを攻撃し、両国は未だに混乱のただ中。テロの連鎖が起き、その解決方法は未だ見出せない状態。
そんな世界情勢を伝えるニュースを,スナックとジュース傍らに見ている自分。
それをまとめて批評。単純に戦争悪いって言っているわけじゃないのだ。
フォロー・ザ・リーダー
聞き始めは北朝鮮を皮肉っているかと思い笑ってしまうが、最後には引きつった笑いに。そーだよ、人ごとじゃないんだよ、今の日本は。
↓は宇多丸師匠の解説。
最初ブッシュのことを揶揄するような感じにしようと思ったんだけど、その前に自分たちの話をしたいってことで石原慎太郎的なキャラクターを設定した。ただ、彼のような人物を否定する言葉を並べるのは簡単なんだけど、むしろ彼が支持される構造の方が問題だろうと。やっぱり支持されるだけの理由があるっていうか、ああいう人を求めている人たちがいるってことなんだよね。実はそれこそが病理だし、結局選択してるのは自分たちなんだってことまで言わないとダメだと思ったんだよね。
BIG MOUTH
有名人の名前を織り込んで,2MCの宇多丸とMummy-Dが大口叩き大会。
シングル「ウワサの真相」の「聞き飽きたぜ,お前のデケェ〜口」をサンプリング。自分ツッコミのシャレが効いている。
ひとりだけ知らない人が。「コテツ・ヤマモト」ってどんな人?
おぼえていない
トラックがちょっとかわいらしい。そして歌詞は「何もおぼえていない。」の連呼。思わず笑いが。
グレイゾーン
危険だ!その錆び付いたシーソー 右も左も危なっかしいぞ
なら数段上のグレード Welcome to the グレイゾーン
グレイゾーンの本来の意味は「あいまい」。
ここでは本来の意味を逆手にとった「唯一無二の領域」という意味で使っている。
思想的に右(翼)も左(翼)もどちらも説得力がなくなったこの時代、どうするんだ?という問いに対して,俺らの答えはこうだ、と提示した曲。
正直,今のアタシの頭ではイマイチ「グレイゾーン」という意味がピンと来ない・・・
その問いはわかるんだけど。 流行の「Only One」とはちょっと違うようなニュアンスのような気もするし・・・
*1:歌詞が問題になって回収騒ぎにまでなった某ユニットとか典型