しあとりかる-Theatrical-’s blog

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Marvin Gaye「What's Going On」〜その2

What's Going On

What's Going On

その1からの続き。
今回のエントリーはちょっとヘビーです。


この「What's Going On」が大きく評価されているのは,↓のようなことからだとも。

音楽以上に人々に衝撃を与えたのは、このアルバムが、ベトナム戦争(1960年 - 1975年)や公害、貧困といった社会問題を取り上げた歌詞と、それに対する苦悩を赤裸々に表現したマーヴィンの熱唱であった。
当時、シングル盤が中心であった黒人音楽の世界に、一つのテーマ、特に社会情勢などを元にしたアルバムを製作することは画期的なことであり、またこのアルバムで、内容に対して消極的になっていた会社に対して、マーヴィン自身がセルフ・プロデュースという制作体制で望んだことも大きな注目を集めた。
自分の感じたままのことを干渉されずに作品にまとめ上げるというこのセルフ・プロデュースの姿勢は、同世代に活躍した黒人アーティストに大きな影響を与え、マーヴィンの行動に触発されたダニー・ハサウェイスティービー・ワンダーカーティス・メイフィールドなどのアーティストが、より自分の才能をいかした意欲的で充実した作品を多く生み出すことなり、「ニューソウル」という新しい音楽を確立することとなった。
また、この影響はベイビー・フェイスなどの次世代の黒人アーティストにも十二分に受け継がれている。(Marvin Gaye(Wikipedia)より)

ちょこっと時代背景をみてみましょ

そんなコンセプト・アルバムが作られた時代ってどんな状況だったんだろ?
というとこで,年表を作ってみました。
青字はマーヴィン・ゲイに関する事柄
(参考:Wikipedia,tanouxさんのブログ「365 Days of R&B/SOUL」(アンテナに登録しています。))

1963年


ベトナム戦争(1960年〜1975年)に対するアメリカ軍による直接的な軍事介入始まる。
奴隷解放100周年。
8月28日-ワシントン大行進
黒人(アフリカ系アメリカ人)による差別撤廃闘争、いわゆる公民権運動は最高潮に。
この時、公民権運動指導者マーティン・ルーサー・キング牧師が行った「I Have a Dream」の演説は歴史に残るものとして有名。
11月22日-ジョン・F・ケネディ大統領暗殺
ケネディ公民権運動には比較的リベラルな対応を見せていた。
副大統領だったリンドン・B・ジョンソンが大統領に。

1964年


7月2日-公民権法(Civil Rights Act)制定
ジョンソン政権下では積極的に黒人の社会的、経済的地位を向上させるために、役所や企業、大学に黒人を優先的に(若しくは白人と同数)採用することを義務付けるアファーマティブ・アクション政策が取られた。

1967年


タミー・テレルとのデュエット曲「Ain't no mountain high enough」がヒット
4月-ニューヨークで大規模な反戦デモ行進
10月14日-タミー・テレル,ライブ中に意識を失う。
倒れたタミーを受け止めたのが共演者だったマーヴィン・ゲイ
10月21日-首都ワシントンで最大規模の反戦大会
当時のアメリカでは公民権運動が転じた反戦運動が高揚。
さらに大学自治を求める白人の学生運動公民権運動と結びつき、アメリカの若者を既存体制・文化から反発させる風潮が次々に作られた,との評価も。
ベトナム反戦運動はこれら若者の心を捉え、ブームとして一層盛り上がることに。

1968年


3月31日-ジョンソン大統領,テレビ放送によって北爆の部分的中止と、この年に行われる大統領選挙への不出馬を宣言。
4月4日-キング牧師の暗殺
公民権運動はこれを契機に平和的・合法的な反差別運動から過激な運動(1965年に暗殺されたマルコムXの影響が強いとされる)へと変化していったという評価も。
6月5日-ロバート・ケネディ暗殺(ジョン・F・ケネディの弟で国務長官を務めていた)
公民権反戦団体の支持を受けて大統領選に出馬していた。
8月-民主党候補を決定する選挙中のシカゴで、学生を中心に反戦デモ行進が行われたが、警官隊と衝突し、多数が逮捕される。
10月-ベトナム戦争,北爆全面停止

1969年


1月20日-共和党リチャード・ニクソンが大統領就任。
このころベトナムでは地上戦が泥沼化(ゲリラ戦化)。
ニクソンは人的損害の多い地上軍を削減してアメリカ国内の反戦世論を沈静化させようと、このとき54万人に達していた陸上兵力削減に取り掛かり、公約どおり、8月までに第一陣25000名を撤退させる。
8月15日〜17日-ウッドストック・フェスティバル(Woodstock Music and Art Festival)
平和と愛を祝うために,30組以上のロックグループが出演。入場者は40万人以上。
このコンサートの模様は、『ウッドストック』というドキュメンタリー映画として1970年に公開され、アカデミー賞 ドキュメンタリーフィーチャーを受賞。

1970年


3月16日-タミー・テレル,脳腫瘍により死去(享年24歳)。
3月17日〜20日-「What's Going On」レコーディング 

4月-米ソ戦略兵器削減交渉。
冷戦は緊張を緩和し、いわゆるデタントの時代に入る。
6月23日 - 日米安全保障条約、自動延長。

1971年


6月17日 - 沖縄返還協定の調印式
7月1日 - 日本:環境庁発足



時代がこのアルバムを求めたのかも。
マーヴィン・ゲイの目には,当時の緊迫した社会情勢がどのように映ったんでしょうか?



次回は映画「永遠のモータウン
永遠のモータウン [DVD]
のちょっとしたレビューを。