しあとりかる-Theatrical-’s blog

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Aretha Franklin「My Country, 'Tis of Thee」@アメリカ大統領就任式

最近のビックニュースといえば、1月20日(現地時間)にあったアメリカ初のアフリカ系大統領となるバラクフセインオバマ氏の大統領就任式。


新聞を読んでいたら、"Queen of Soul"のあの方の名前発見。
さっそく彼女の当日の映像を見てみよ・・・と探してみたら、こんな面白い映像発見。



現場の高揚した空気が伝わってきます。
最後のあたりに、アレサ・フランクリンが歌っている映像があるんですが。


アレサが歌ったのは、「My Country, 'Tis of Thee」という歌。
1番の歌詞は

My country, 'tis of thee,
Sweet land of liberty,
Of thee I sing;
Land where my fathers died,
Land of the pilgrims' pride,
From every mountainside
Let freedom ring!

というもの。表現が古風なんですが、言わんとする意味はわかります。
なぜ、就任式でこの歌が歌われたのか?


その疑問に答えるのにポポちゃんサンの
オバマ大統領就任式で歌われた“歌”の意味を考えてみたという記事がとても参考になったので、ご紹介(一部省略)。

我が祖国よ
美しい自由の国を讃え
私は歌う
父が骨を埋めた国
開拓者の誇りとする国
すべての山々から
自由よ鳴り響け


(中略)


就任式にはアメリカを代表するソウルシンガー、“クイーン・オブ・ソウル”ことアレサ・フランクリンが駆けつけ、66歳とは思えない迫力で愛国歌「America」を歌い上げた。先に引用した詩は「America」の冒頭部分の歌詞である。


ではなぜ、オバマ大統領の就任式にこの曲が歌われたのだろうか? アメリカにはほかにも「God Bless America」や「America the Beautiful」などの有名な愛国歌がある。しかし、あえてオバマ大統領はこの「America」を選んだ。その意味を考えてみたい。


報じられているとおり、オバマ大統領は今回の大統領就任式において、“奴隷解放の父”として知られるエイブラハム・リンカーン16代大統領に自らの姿を重ねて国民にアピールしていたと言われている。就任式のテーマをリンカーンの演説から採った「自由と新生」と定め、宣誓式にはリンカーンが使った聖書を使用した。ちなみに今年はリンカーン生誕200周年にあたる。


しかし、オバマ大統領が強く意識していたのはリンカーンだけではない。もうひとり、オバマ大統領が強く意識しているアメリカ史に残る偉人がいる。そしてそれは就任式で歌われた「America」と深く関わっているのだ。


「America」はアメリカでは「My Country, 'Tis of Thee」というタイトルでより親しまれている。日本ではあまり知られていないが、アメリカでは日本でも有名な「God Bless America」や「America the Beautiful」などと並ぶ愛国歌のスタンダードだ。独立記念日やメモリアルデーには必ず歌われるこれらの曲は、アメリカ国民にとって国歌「The Star-Spangled Banner(星条旗)」と並ぶ、もうひとつの国歌とも呼べる存在である。


「My Country, 'Tis of Thee」は1831年に牧師のサミュエル・フランシス・スミスによって作詞された。作詞したときスミス牧師はまだ23歳で、マサチューセッツにあるアンドーヴァー神学校の学生だった。実はメロディそのものはイギリス国歌(法律で制定されていないが国歌として認識されている)である「God Save the Queen (King)」から採られており、まったく同一のものである。この曲は1931年に「The Star-Spangled Banner」が国歌として採用されるまで、事実上のアメリカ国歌として広く国民に親しまれてきた。19世紀から20世紀初頭にかけてのことである。


その後もこの曲は愛国歌のひとつとして歌い継がれてきたが、20世紀半ばになって、その歌詞がアメリカ国民の心に深く刻み込まれるひとつの出来事があった。「My Country, 'Tis of Thee」の冒頭部分の歌詞が黒人公民権運動の指導者、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師による有名なスピーチ「I have a Dream(私には夢がある)」に引用されたのだ。


I have a Dream」はキング牧師が1963年に公民権を求めて25万人が集った“ワシントン大行進”で行ったスピーチである。人種差別の撤廃と人種・宗教を超えた人類愛と調和の世界を謳った内容は多くの人々の心を打ち、20世紀のアメリカを代表する演説として知られている。


キング牧師はスピーチの中でこう語っている。「私には夢がある。ジョージアの赤色の丘の上で、かつての奴隷の子孫とかつての奴隷を所有した者の子孫が同胞として同じテーブルにつく日が来るという夢が」と。そしてその夢をかなえたとき、新しい意味を込めて「My Country, 'Tis of Thee」を歌うことができるのだ、と。


「My Country, 'Tis of Thee」は、奴隷解放をめぐる戦いだった南北戦争の30年も前に作られた曲である。つまり白人開拓者たちとイギリスから“自由”になった祖国を讃える歌だった「My Country, 'Tis of Thee」が、キング牧師のスピーチによって黒人をはじめとするあらゆる人種、そしてあらゆる人々の“自由”を讃える歌へとこのとき変わったのだ。

「我々の多様な出自は強みであり、弱みではない。キリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒ヒンズー教徒、そして無宗教者の国だ。地球上の津々浦々を源泉とする、あらゆる言語と文化で形作られている」
「かつての憎しみはいずれ消え、我々を分け隔てた壁はいずれ消える。世界が小さくなるにつれ、我々が共通に持つ人類愛が出現する。そしてアメリカは平和の時代をもたらす役割を果たす」
「なぜ男性も女性も子供たちも、どのような人種、宗教の人々も、こうして就任式に集まることができるのか。なぜ約60年前はレストランで差別された人々が、こうして宣誓式に立ち会うことができるのか。これこそが、自由の意味なのだ」
(いずれも「毎日jp」より引用)


これらのオバマ大統領による就任演説の一節は、人種差別の撤廃を強く意識しており、さらに人種や宗教の壁を超えた世界人類の融和を強く願う内容だ。それはキング牧師の「I have a Dream」を思い起こさせる。


アメリカでは1月の第3月曜日を「マーティン・ルーサー・キング・デイ」として国民の祝日と定められている。アメリカで個人の栄誉を記念して国民の祝日になったのは、キング牧師のほかにアメリカ大陸を発見したコロンブスと初代大統領のワシントンの二人のみ。そして今年の「マーティン・ルーサー・キング・デイ」は1月19日、つまり大統領就任式の前日だ。オバマ大統領がキングのことを意識しないわけがない。


18日にリンカーン記念館で行われたオバマ大統領就任を祝うコンサートには、スティーヴィー・ワンダーU2らが集まってその歌声を響かせた。いずれもキング牧師を深くリスペクトし、キング牧師に捧げる曲を持つアーティストである。コンサートのラストでは、夫であるジェイ・Zとともにオバマ大統領の選挙活動に関わったビヨンセが「America the Beautiful」を歌い上げた。報道によるとビヨンセは大統領就任式で歌いたいと立候補したそうだが、結局それは叶わなかった。


リンカーン大統領、キング牧師、そしてオバマ大統領を貫くアメリカに対する想い。そしてそこから広がる世界への想い。それを示す曲は国土の美しさを称揚した「America the Beautiful」ではない。キング牧師によって“新しい意味”を吹き込まれた「My Country, 'Tis of Thee」でないといけなかったのだ。


ちなみにキング牧師がワシントン大行進の際、スピーチを行った場所は就任記念コンサートが行われたリンカーン記念館の正面にあたる。リンカーン記念館はナショナル・モールの西端に位置し、オバマ大統領の就任式が行われたアメリカ合衆国議会議事堂とはナショナル・モールを挟んで正反対の場所に位置することになる。オバマ大統領もアレサ・フランクリンも、全米から集まった200万人の人々の向こうに「I have a Dream」と語ったキング牧師の姿を見ていたのかもしれない。
(以下略)


この文章の途中で、ビヨンセが就任式で歌いたいと言ったというくだりがありまして、それも悪くはないかもしれないけど、でも、アレサがいる限りはなぁ・・・と思った次第。
アフリカ系アメリカ人のシンガーで、あのアレサと同じところで、あの歌を歌いたいと思った人は多かったんだろうなぁ。


就任式の後、オバマさんのスピーチの本を買って聴いたことある友人らと話す機会があったのですが、「人をひきつける話し方がとにかくすごい。」と言ってました。最近英語に触れる機会があるので、この機会に彼のスピーチ集を対訳付きで聴いてみようかなぁ・・・と思ったりしまして。


友人らとの話の流れで、出てきたキング牧師の↑のスピーチを聴いてみようかなぁ。
「英語に関心ある人なら、絶対聴くべき!」と強くPUSHされたので。
アレサがどんな気持ちであの歌を歌ったのか、それをどんな気持ちでアフリカ系アメリカ人が聴いていたのか、それが少しでも理解できるかも。